一方的な通知に困惑する小林さんの嘆き

不動産の賃貸借契約は法律上の合意に基づいて成立する。つまり、家賃の額も含め、貸し手側と借り手側双方の合意があって初めて契約が成立するわけだ。たとえ一部でも納得がいかず合意がなければ契約は成立しない。

その点を考えると、家賃を値上げする旨の通知を一方的にすることは許されないと考えられるだろう。実際に小林さんもそのように考え、私に質問してきた。

「管理会社の一方的な通知による値上げって……ちょっとおかしくないですか?」

だが現実は無常だ。家賃の値上げの決定とその通知は貸し手側の一方的な通知によって可能だ。近隣の家賃相場や租税その他負担の増加など一定の条件を満たすことで賃料の増額請求が可能だと借地借家法には記載がされているのだ。そして、この賃料増額の意思表示のある通知が借り手側に到達した時点で効果が生じる。

つまり、管理会社からの一方的な通知が小林さんに届いた時点で、家賃の2万円の値上げの効果が生じてしまっているわけだ。

「一体どうしろっていうんですか⁉ 2万円も値上がりしたら僕は生活できないですよ。かといって引っ越すのも負担が大きすぎるし……。八方ふさがりじゃないですか、こんなの!」

小林さんは必死に私にすがりつく。

●果たして家賃の値上げは拒めるものなのでしょうか? 状況に納得のいかない小林さんがとった対応とその結末は、後編【突然の「家賃値上げ」に不満爆発! 転居の費用のない“八方ふさがり”の男性がとった行動は…】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。