遺言書は「作っておけば安心」とは言えない

現在の有史さんと隼人さんは兄弟として和解こそしたものの、多少なりともわだかまりは残ったままだ。遺言書のことが問題となるまで2人の兄弟関係は良好であり、遺産は半分ずつ分けると決めていたようだった。

しかし、父哲夫さんが遺言書を残したことによって状況は一転しての相続争いだ。相続によって当初の想定よりも財産を多く受け取れることになった兄とそうでない弟との争いである。相続財産の額は1500万円と相続争いとしては決して額の大きい規模のものではないが、平穏な兄弟の関係性に消えない亀裂を作るには十分なものだ。

遺言書は「とりあえず作れば安心」というものではない。形だけ整えて作成しても、無効となってしまったり、今回のように余計な相続争いを招いたりすることもある。

遺言書を作るのであれば、

・遺言書は無効となるものではないか
・完成後は遺言書の存在が原因となって争いを招くことがないか

少なくともこの2つの観点から確認することが必要だろう。

もし、可能であるならば多少費用をかけてでも専門家へ相談して作成するべきだ。そうすることで相続トラブルが予防でき、より確実な遺言書の作成が可能になるためだ。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。