遺言書作成時に注意すべきことは……

遺言書の記載内容は明確でなければならない。

中でも特に問題となりやすいのが日付だ。過去の判例にのっとると、「2024年1月」のように、年月までしかないものや、「2024年1月吉日」などのように具体的な日付が明確になっていないものは、形式的要件を満たさず遺言書自体が無効となる。

また、日付がしっかり描かれていても、遺言書の記載内容があいまいでは争いが引き起こされる可能性もある。今回の遺言書で言えば「万が一のことがあれば」という部分だ。

事実、「万が一ってなんだ? こんな内容が意味不明な遺言書なんて無効だろう」と隼人さんは訴えていた。

だがそうはならない。一般的に万が一の際と言えば死を連想できる。直接的に死を指しているわけではないが遺言書に記載されている内容だと考えると一定の理解はできる。仮に裁判をしたとしても、無効な遺言書とまでは言い切れない。

遺言書の内容に大きく影響するような不明瞭さであれば遺言書の全体ないし一部は無効となるかもしれないが、この程度ではそうはならない。同席していた筆者が隼人さんにそれを伝えると、彼は黙ってしまう。同時に遺言書が無効となることはないと隼人さんは悟る。兄弟の中で決定的な亀裂が生まれた瞬間だった。

日常生活ですらあいまいな言い回しや大まかな説明では勘違いしたり意図が正しく伝わらなかったりすることは往々にある。遺言書への記載は極力分かりやすさを重視するべきだ。