<前編のあらすじ>

結婚10年目の成海は、夫・泰輔が毎晩淹れてくれるコーヒーを楽しみにしていた。しかし泰輔はプロとの味の差に満足できていない様子だった。

ある日突然、自宅に大きな段ボールが届く。開けてみると30万円の焙煎機であることがわかった。

キッチンに置き場所もなく、そもそも泰輔が高額な機械を事前に相談もなく買ったことに対して、怒りが込み上げてくる成海だった。

●【前編】「何なのこれ…!」夫の趣味が引き起こした暴走に激怒!相談なく購入した30万円焙煎機が夫婦の絆を揺るがす大事に発展

置き場所をめぐる夫婦喧嘩

夜になると帰って来た夫は段ボールを見て顔を綻ばせた。

「おお、届いてたのか」

そのままさっさと部屋着に着替えると段ボールを開けて中から本体を取り出そうとした。

「うわ、ちょっと重いな。成海、手伝ってくれよ」

本当ならすぐにでも怒ってやりたい気持ちだったが、落とされでもしたらたまらないと思い、成海は黙って泰輔に手を貸した。とはいえ、もちろん焙煎機を置くためのスペースは台所には存在しない。

泰輔が「とりあえずそこに置こう」と調理のスペースに置こうとしたので成海は思わず声を荒げた。

「ちょっと待ってよ! そこに置いたらまな板とか置けなくなるじゃない。別のところにしてよ」

「いや今言うなって。とりあえず置かないと腕が限界なんだって」

「それなら床に置いてよ。それでいいでしょ?」

成海がそう言うと泰輔は鼻で笑ってくる。

「何言ってんだよ。この焙煎機は200度以上の熱を出して豆を煎るんだぜ。そんなのを床に置いたら傷つくに決まってるだろ。しかもこんなに重いんだしさ」

当たり前だろと見下された感じがして頭にきた。

「そもそも私はその機械がどんなものなのかも知らないんだから……!」

「だったら俺の指示に従ってくれよ。とりあえずここに置くよ」