趣味に対する価値観の違い

2人で焙煎機をキッチンに置いたが、もちろん成海は納得していない。

「このままここに置いておくなんて許さないから。ちゃんと邪魔にならないところに移動してよね」

「どこに置くんだよ? 台所が1番いいだろ? コーヒーを淹れるのにも便利だしさ。ていうかなんでこんなにものが多いんだよ。ちゃんと整理してたらもっとスペースあったんじゃないの?」

「今までこれでやってたんだから文句なんて言わせないわよ」

成海はイライラしながら返事をした。しかし泰輔も、せっかく買った焙煎機に文句をつけられたのが気に食わなかったのか、すぐに反論してきた。

「俺、焙煎機ほしいって言ってたじゃんか……」

「それは聞いてたけどいきなり買うなんて知らなかったわよ。もし買うんだとしてもこんな高額なものなら事前に相談しないといけないんじゃないの?」

成海は1番引っかかってる部分に切り込んだ。泰輔は痛いところを突かれたと顔を歪めたがそれでも言い返してくる。

「……いや俺はもう伝えたつもりだったし。それにタイムセールで安くなってたんだよ。これで美味しいコーヒーが毎日飲めるようになるんだから安いもんだろ?」

「安いか高いかを決めるのはあなたじゃない! 2人で話し合って決めるものでしょ! それをサボるからこうして置くところもないっていう状況になってるの! もうちょっと後先考えて行動してよ!」

苛立ちから成海は大きな声を出す。怒られた泰輔は不満そうに成海を見る。

「俺の趣味で買うんだから別にいいだろ……⁉ 」

そんな泰輔の言葉がよりいっそう成海の感情を逆なでた。

「それじゃあ私が趣味で車を買ってもあなたは文句を言わないっていうのね⁉ じゃあ今度買ってこようかしら!」

「……いやそこまでの額じゃないし」

「あなたはそういうことをやったってこと! 夫婦なんだから何をするにもちゃんと話し合って決めないとダメなのよ! とにかくこの重たい荷物はすぐにどけて! 私はもう手伝わないからね!」

成海は逃げ出すように部屋を出てそのまま寝室に入った。結局その日はリビングに戻ることはなかった。