事業部長に告げられたボーナス40%カットの衝撃

「どういうことですか⁉」

玲子は思わず声を荒げた。しんとした会議室に玲子の声が響き渡る。

「そのままの言葉通りだよ。P社のプレゼン、落としただろう。大口のクライアントだったからな。ボーナスだってそりゃ今まで通りってわけにはいかないよ」

事業部長はそう言って肩を竦めた。玲子は食い下がろうとしたが、前年と比べて業績が下がっているのは事実だったので、それ以上何も言えなかった。

胸の奥からせり上がってくる不快感と焦燥感に、玲子はたまらず化粧室へと逃げ込んだ。

業績や実力がそのまま年棒や賞与に跳ね返ってくる玲子の会社において、賞与の40%カットという事実は重い。だがその背景にあるものよりも、玲子にははっきりと減った数十万という額面の金額こそが重要だった。

玲子は個室に閉じこもり、スマホを開く。来月分のクレジットカードの支払いはキャッシングも含めて73万。家賃を含めれば既に確定している出費は100万を余裕で超える。そこにそれ以外の生活費が乗っかることを考えれば、玲子の給料ではまかなえない金額になる。

食費、交際費、美容院代にジムの会員費、毎日のタクシー代――。冷静に整理してみれば、明らかに身の丈を超えている。しかし、どれを削っても「理想の自分」ではなくなる気がした。

玲子はうなだれた。だがいつまでもそうしているわけにはいかない。別の取引先との定例ミーティングの時間が迫っていた。

立ち上がった玲子は、ただ座っていただけのトイレの洗浄ボタンを押す。渦を巻いて流れていく水は、玲子を飲み込む蟻地獄のように見えた。

●クレジットカードの支払いに備えるため、節約の日々が続く。それでも玲子は生活を見直そうという気持ちになれない。そんな時、高校時代の友人たちと再会する。後編“理想の自分”を追い求めてクレカ破産寸前に…ハイスぺ女性が旧友との再会で気付いた「本当の幸せ」にて詳細をお届けする。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。