4人で買い物に出かけると、義父が次々と支払いを済ませていく

結局、その日の午後は、4人で家電量販店と家具店をはしごした。絵里香や義母が目を輝かせるたび、義父は淡々と財布を開く。空気清浄機、高機能オーブン、マッサージチェア。あれよあれよという間に配送手続きが終わっていく。

「お義母さん、やっぱり支払いは自分たちで……」

「修吾くん、遠慮しないでいいのよ。これは私たちの気持ちだから」

義母の声が、甘く優しく響いた。でもその響きが、どこか耳にこびりつくように重たい。

後日、リビングの床に並ぶ配送明細と保証書を眺めながら、修吾はなんともいえない気持ちでいた。絵里香は買ったばかりのマッサージチェアに早速座り、リモコンをいじっている。

「ねえ、これすごい。肩にちょうど当たるの。あの値段ならコスパもいいよね」

「……絵里香さ、本当にこれでよかったの?」

「なにが?」

「いや、あまりにいろいろやってもらいすぎてないかなって」

絵里香は一瞬動きを止めたが、すぐにまた微笑んで言った。

「気にしすぎじゃない? うちの親が好きでやってくれてることなんだから」

確かに義両親に悪気はない。むしろ善意のかたまりだ。でも、その善意が、修吾たちの生活を塗り替えていくような感覚があるのだ。

その夜、マッサージチェアに横たわりながら心地よさそうに眠る絵里香を見て、修吾は小さくため息を漏らした。

●義両親の「好意」に生活が少しずつつ浸食されていくような息苦しさを修吾は覚えるようになる。ついには心労から仕事にまで支障をきたすように。そんな悩みを、ある日、修吾は兄に見透かされてしまい……。後編【「向こうの親に侵食されている」優しい義両親に男性が感じた息苦しさを自覚するきっかけをくれた兄のひと言】にて詳細をお届けする。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。