遠慮はいらないと言われても…

チャイムの音とともに、義両親がにこやかに現れた。

「修吾くん、これね、この前テレビで紹介されてたやつなの。ほら、なんとかって

農園のマスクメロン。すっごく甘くて、もう、驚くから食べてみて」

玄関からノンストップでしゃべり続けていた義母は、手にしていた紙袋を修吾に差し出した。袋の中をのぞき込むと、まるで工芸品のようにネット模様の整ったメロンが2玉。

「いつもすみません、こんな高価なもの……」

「何言ってるの。可愛い娘夫婦のために持ってきたんだから、遠慮なんか要らないわよ」

義母はからからと笑いながらキッチンに入り、「冷やしとくわね」と冷蔵庫を開けた。

義父は短く修吾たちに挨拶をすると、無言でテーブルに着いた。

昼食は、絵里香が朝から仕込んでいた煮込みハンバーグ。ひとしきり感想を言い合った後、義母が笑顔で提案した。

「ねえ、せっかくだからこのあと買い物でもどう?」

「いいね、賛成」

絵里香がぱっと顔を輝かせる。義父も「そうだな。テレビも大きいのに買い替えてもいいんじゃないか」と口を開く。

「いえ、うちはもう十分ですから……」

修吾が言いかけたところで、絵里香がにこりと笑って遮る。

「せっかくだから、一緒に見に行こうよ。買うかどうかは、そのあと考えて」
あまりに無邪気な彼女に、修吾は反論の言葉を飲み込んだ。