1週間もたたないうちに再び誘われ…

「また行こうよ、競馬」

真理から誘いのメッセージが届いたのは、それから1週間も経たないうちだった。
迷ったものの、1度大きく勝ったという事実が背中を押し、緑子は再び競馬場へと足を運んだ。

真理は相変わらず明るく、迷いなく馬券を買っていた。緑子は前回のように感覚で馬を選び、それが三連複で当たった。初回の万馬券には遠く及ばなかったが、当たった瞬間、腹の底がぐっと熱くなる感覚が巡った。

「ね、言ったでしょ。競馬、面白いって」

「うん……そうかも」

それからというもの緑子は1人でも競馬場へ行くようになった。家事を早めに終わらせて、洗濯物を干したあとに出かける。帰ってくるのは夕方。

祐樹の帰宅には十分間に合った。

最初は千円札を何枚か賭けるだけだった。でも、レースを眺めているうち、もう1枚、あともう1枚とお金を下ろし、馬券を買った。

もちろん外れることのほうが多かった。しかし勝てば取り戻せると思えば、財布が軽くなっていくことにも危機感はなかった。

緑子は、貯金を少しずつ切り崩し始めた。

「最近、楽しそうだな。今日も友達と?」

ある晩、夕食のあとに祐樹がぽつりと呟いた。緑子は一瞬ドキリとしたが、笑って誤魔化した。

「うん。真理と、ね」

「そうか……」

祐樹はそれ以上何も言わなかった。緑子の顔をじっと見ていたが、その視線の意味までは、読み取れなかった。

●さらに深みにはまっていく緑子。ついに貯金を崩すだけでは飽き足らず、消費者金融で借金までして競馬にお金をつぎ込むように。しかし、そんな日々は長くは続かず、ついに借金までして競馬に入れ込んでいることが祐樹にもバレてしまい……。後編【貯金を使い果たし借金まで…ギャンブル中毒が夫にバレた40代女性の身に起こったこと】にて詳細をお届けする。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。