実は借金が
21時過ぎまで残業をして家に帰った翔太がアパートのポストをのぞくと、カード会社から送られてきた封筒が入っていた。翔太は深く息を吐いた。これで今月もなんとかなる。翔太はその場で封筒を明け、真新しいクレジットカードを取り出した。首の皮一枚つながったという安堵を踏みしめながら来た道を引き返し、途中にあるコンビニへと向かった。
これでトータル6枚目になる新しいクレジットカードをATMに入れ、キャッシングで現金を引き出す。ひとまず10万。翔太は手にしたお金をすぐに、キャッシュカ―ドを使ってATMへと戻す。領収書で口座の残高を確認する。これで週明けにやってくる別のクレジットカードの引き落としはクリアだ。
転職してまだ1年だが、給料と賞与を重視した転職なだけあって、翔太の年収はそれほど低くはない。もちろんきちんと新卒で働きだした友達に比べれば翔太の給料なんて大したことはなかったが、それでもまずまずの待遇で働いている。
だが翔太は得た収入から家賃などの生活費を差し引いたほとんどを、セミナーや交流会のために使っている。もちろんその場で盛り上がれば二次会だなんだと出費はかさむし、ゴルフをするのにも交流会に行くのにもウェアやスーツを揃えておく必要があるので金はかかったが、人脈を作るための投資と考えれば必要経費だ。
だが、その必要経費が翔太の首を絞めているのも事実だった。収入を上回る膨大な出費ですぐに生活は回らなくなり、まず家賃を滞納した。2か月目に管理会社から退去をほのめかされて慌てた翔太はひとまずキャッシングで難を逃れた。今思えば、それがきっかけだったように思う。
もう2度とないようにと、クレジットカードの利用をセーブする必要があった翔太だったが、“仕事上の必要経費”を削るなんてできるはずもなく、支払いのほうをセーブすることにした。つまり、リボ払いを始めた。
しかし支払いは問題なくできたとしても、クレジットカードの上限はすぐにいっぱいになってしまった。クレジットカードが使えなければ “仕事上の必要経費”をろくに捻出できなくなる。だから翔太は次のクレジットカードを作った。あとはその繰り返しだった。
クレジットカードはいつの間にか6枚目。5枚目までは上限いっぱいまで使っているため、財布に厚みを出すためだけに存在している有様だ。
首の皮1枚つながった状況だが、予断は許さない。再来週にはまだ別のカードの引き落としが迫っている。なんとか現金をかき集めなければならなかった。
●もはや首が回らない状態一歩手前であることは翔太も十分承知していた。そんな折、現金をかき集める目的もかねて大学時代のサークル仲間との会合を設定した翔太。そこで大学時代の人気者が姿を消した理由を聞き身の振り方を改めることになる。後編:【「あいつは実家に帰った」キャッシングで首が回らない外資系コンサルマンが戦慄した大学時代の人気者と連絡が取れなくなった理由】にて詳細をお届けする。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。