夏はちゃんとどこかに行こう

照れくさそうに商品を紹介する宏昌を見て、成美は思わず頬を緩めた。何とかして罪滅ぼしをしようとする宏昌の必死さが可愛く思えたのだ。そしてちゃんと家族のことを思ってくれているのだなというのが伝わって安堵する。

「だからさ、夏はしっかり予定組んで、旅行してみよう」

宏昌の言葉に、成美はうなずいた。やがて昼寝をしていた陸人が目を覚ました。宏昌は陸人を抱っこして送られて来た特産品を見せた。

「ほら、陸人。これ全部食べていいからな」

「えっ⁉ ホントに⁉ 全部食べていいの⁉」

「ああ、もちろんだ。何が食べたい?」

陸人は見たことのない商品に目を光らせる。

陸人はそう言ってようかんを掴む。

「これ!」

ようかんのことなんて知らないはずだが、見た目が金色だったのがお気に召したのだろう。

嬉しそうに笑う陸人を見て成美は目尻を下げる。

「じゃあご飯食べたらデザートとして食べようね」

「うん!」

結局、成美たちは遠出することなく、近所の公園で遊んだり、スーパーで買い物をしたりして普段の休日と変わらないゴールデンウィークを過ごした。

夏の旅行は楽しみだけれど、家族の思い出づくりに特別な時間は必ずしも必要ではないのだろう。どこに行くかではなく、何をするかでもなく、誰と過ごすかがきっと1番大切なのだ。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。