夫がなにやら一計を案じ

夕方になり成美は家族3人分の夕食を作っていた。陸人はあのあと梨花と公園で遊び疲れて昼寝中で、ソファに座る宏昌はスマホでソシャゲの真っ最中だ。

成美がカレーに入れる具材を切っていると、インターフォンが部屋に響いた。備え付けの画面を覗くとお馴染みの配達業者が立っていた。鍵を開けて受けとった荷物は、宛名こそ成美の名前になっていたが、どれも身に覚えのないもので、京都やら北海道やら鹿児島やら、色々な地域から送られてきたものだった。

「ねえ、なんか荷物届いたけど?」

ソファの宏昌に声をかける。宏昌はスマホから顔を上げて答えた。

「俺が注文した」

宏昌は立ち上がり、段ボールを開けていく。中に入っていたのは全国各地の特産品や銘菓だった。

「ほら、ゴールデンウィークさ、結局どこにも行けなかったじゃん」

「……え?」

宏昌は頭をかく。

「ちょっと俺が変な感じで断っちゃったからさ。確かに成美の言う通り行く方向で何とか考えれば良かったんだけど、嫌な言い方で頭ごなしに否定しちゃってたから」

そこで成美は反省を口にする。

「ううん、私も悪かったなって思ってる。いっつも家にいてさ、たまには羽を伸ばしたいなって思っちゃったの。陸人を利用して、本当は自分が遊びたいだけだったんだよね……」

宏昌は苦笑いをしながら成美に目を向ける。

「……まあ俺もそれは同じだから。正直仕事が立て込んでてさ、ゴールデンウィークはようやくゆっくりできるなって思ってたんだよ。そんなときに旅行を提案されたからつい頭ごなしに否定しちゃってな」

「……そう、だよね。宏昌は毎日仕事を頑張ってくれてるんだよね。そんな当たり前のことを私忘れてて……」

「い、いやいや、もうそれはお互い様だから。それでさ俺、喧嘩した2日後に京都に旅行に行けないかって検索をしたんだ。でもさもうどこの旅館もいっぱいで予約が取れなかったんだよ」

「……あ、そうだったんだ。私、そんなことも調べずに京都に行きたいとか行ってたんだね」

宏昌は首を横に振る。

「いやあのときに俺が行く感じで話を進めてたら取れたかもしれない。とにかく俺が今回のゴールデンウィークを台無しにしちゃってさ。だからせめて家で旅行気分を楽しめないかって思って通販で色々と特産品を注文しておいたんだよ。ほら、これ、京都で有名な和菓子店のようかん。他にもお蕎麦とかもちろん京都だけじゃなくて色々」