「モームリ」の飲み会は?

ここまでアルハラの被害を語ってきましたが、かくいう私は、サラリーマン時代には自ら上司を誘うほど酒の席が好きでした。

会議ではうまく伝えられなかったアイデアもお酒の力を借りれば、とんとん拍子で話が進むときがあります。制限時間を気にせず、思考能力の鈍った上司を説得できますから、最高のプレゼン環境です。報告しにくい失敗だって、「相談があります」と飲みに誘って告白すれば、笑い話になるかもしれません。

飲み会を利用し、私は出世していったので、同僚たちからはさぞひがまれていたことでしょう。ただビジネスと飲み会は、切っても切れない関係にあるのも確かです。アルハラの被害をなくすのがむずかしい一因になっています。

今、私は経営者として、数十人の部下を率いる立場になりました。相変わらずお酒は好きで、「モームリ」では頻繁に飲み会を開いています。

まず誘うときは、特定の個人に声をかけず、全社またはグループ単位で声をかけます。その際、「参加したい人は、18時にロビーに集合」「これから誰々と飲むけど、ほかに来たい人は残っていて」など、同調圧力がかからず、各自が判断しやすい環境をつくっています。

もちろん飲み物はみなバラバラで、乾杯のときもお酒を強要することはありません。ソフトドリンクだけの人もたくさんいます。また、飲み会では仕事の話はしないようにしています。残業代が発生しないのに、上司から仕事の話をされるのはおかしいと感じる人もいます。

そのかいあってか、社員には仕事とプライベートをきっちりと分けたい、若いZ世代が多いのですが、毎回、飲み会の参加希望者が多くて困っているぐらいです。お酒は飲みたくないけど、交流が深まる酒の席は好きというZ世代は意外と多いのだと気がつかされました。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。