人材確保が難航する中でさらに不運が重なる

以前は口コミや、地域情報紙などへの掲載ですぐに人が集まりました。しかし、今は複数のアルバイト情報サイトを使ってもなかなか応募まで至りません。

うちの店では、アルバイトの女性にも制服代わりに妻が購入した着物を着てもらっています。オープン当時は「着付けや着物での所作がマスターできる」と好評でしたが、最近の若い学生はむしろ、仕事に入る度に着物に着替えなければならなかったり、動きづらい着物でサービスしたりするのが「うざい」と感じるようです。

アルバイトのシフトや休みの希望にはできる限り対応し、定期的に新メニューの試食会を開催したり、若い女性が好みそうなまかないを用意したり、いろいろ気を遣っているつもりですが、妻によれば「今どき、うちみたいな店のアルバイトは流行らない」のだそうです。

確かに、開店した頃は周囲に飲食店が少なく、グルメ情報誌に“住宅街の名店”などと取り上げられたりもしましたが、コロナ明け以降は周辺に新しい業態の飲食店が増えてきました。

昼は洒落たカフェで夜はダーツができるワインバーとなる店や、昭和の大衆居酒屋を現代風にアレンジしたネオ居酒屋など今風の店が多く、アルバイトの希望者はそうした店の方に魅力を感じるようです。

さらに頭が痛いのは、核となるアルバイトの女性が辞めてしまったことです。

●しかし、お店の閉店理由はこれらの不運とはまた別のところにありました。後編【“住宅街の名店”ともてはやされた日本料理店が閉店へ…コスト高や人材難ではない「本当の原因」とは】で詳説します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。