<前編のあらすじ>

片桐広次さん(仮名・48歳)は日本料理店の店主です。

都内に店を開いて15年、ようやくコロナ禍という逆風を乗り越えたと思っていたところでインフレによる光熱費や材料費の高騰に悩まされました。

しかし問題はそれだけはなく、ここに来て人件費増加と人手不足の難題が浮上してきました。求める人材の確保ができない中、不運なことにアルバイトのリーダー格だった女性の退職が決まります。

●前編:【過去最大の「最低賃金アップ」がきっかけに…日本料理店の経営者を追い詰めたコロナに次ぐ“悪夢”】

問題が山積する日本料理店の経営

私はホテルの和食店で修業をし、15年前に独立して都内に和食店をオープンしました。

開業準備を進めていた頃にリーマンショックが起き、その後は長いデフレの時代が続きました。そうした中で少しずつ固定客もついて、ようやく店が軌道に乗ったと思ったら、今度はコロナ禍です。

休業や営業時間の短縮を余儀なくされ、休業支援金や給付金だけではとても足りず、個人の貯えを切り崩して何とか持ちこたえました。

しかし、2023年にはコロナが明けて客足も戻り、これまでの分を取り戻すぞと鉢巻を締め直したら、少し前から別の問題が浮上してきたのです。

それは、コスト高と深刻な人材難です。