来年古希を迎える山口誠さん(仮名)。現役時代は輸入食品を扱う専門商社の経理マンでした。仕事でお金を扱うため自身の資産形成への関心も高く、老後資金は時間をかけてしっかり準備してきたそうです。

65歳までは勤務先の継続雇用制度を利用して働き、完全リタイアした時点で退職金を含めた貯蓄は2500万円を超えていました。世帯の年金収入は個人年金保険も合わせて手取り25万円、さらに、実家を立て替えたアパートからの家賃収入も30万円(経費を除く実質収入は15万円)あり、老後の生活は左うちわのはずでした。

しかし、そんな山口さんを古希目前になって予想外のアクシデントが襲います。「悠々自適どころか、今年に入って初めて虎の子の預貯金に手をつけた。アパートのローンもまだ10年以上残っていて、この先不安しかない」と嘆く山口さんに、とんでもない誤算について話を聞きました。

〈山口誠さんプロフィール〉

東京都在住
69歳
男性
年金受給者
妻と次女、孫娘の4人暮らし
金融資産2700万円

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昭和から令和にかけ30余年に渡った会社員生活の大半は経理部でした。そのせいか、「石橋を叩いて壊す」ような慎重かつ堅実な性格と言われます。

少子高齢化による日本の公的年金制度の不安は今に始まった話でなく、何十年も前から指摘されてきたことです。私たち夫婦は現役時代から家計管理を徹底し、当初は専業主婦だった妻も近所にできたドラッグストアで働いて収入を増やすなど、老後に向けてできる限りの準備を進めてきました。私の勤務先は中小企業だったので退職金も人並み以下でしたし、企業年金もありません。

それでも、65歳で完全リタイアした時点で貯蓄は2500万円を超えていました。娘2人を私立大学まで行かせたことを思えば、まずまずの合格点ではないかと自負しています。