友達からの誘い
翌日の日曜日。紀子は拓也とのんびり朝ご飯を食べていると、インターホンが鳴った。
「誰、こんな時間に?」
紀子がいぶかしんで、インターホンの画面を見ると、そこには子供たちの姿があった。
「あれ、隆之介君たちじゃない……?」
紀子は拓也を呼んで、一緒にインターホンをのぞき込む。隆之介だけではない。一緒にみこしを担いだ、見覚えのある子供たちの姿が見えた。
「俺たち今から学校でサッカーするんだけど、拓也も来いよ」
隆之介の声がインターホン越しに響く。驚く紀子に拓也は満面の笑みを見せてくる。
「い、行っていいでしょ?」
「うん、もちろん良いけど」
「ありがとう!」
拓也は玄関へ駆け出し、靴を履いて出て行こうとする。
「ちゃんと遅くならないで帰ってきてよ!」
「分かった!」
大きな声で返事をして拓也は出て行ってしまった。
しばらくドアを見つめて、紀子は思わず吹き出した。
「ふふ、うれしそうな顔しちゃって……」
リビングに戻った紀子は携帯を触る。画面には近場の海水浴場の画像が表示されている。
朝食を食べ終えたら、来週あたりに行くのはどうかと提案するつもりだったのだが、この分だと旅行は先送りになるかもしれない。
「あーあ。今日、何しようかな」
紀子はつぶやいて、食べっぱなしになっている朝食の片付けを始めた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。