「当たり前じゃない」景色

それから、田中たちはあっという間に冷蔵庫を格安で手に入れることに成功する。良平も費用が浮いたことで空調設備を購入することができ、たちまち店は再開に向けて進み出した。

さらに田中たちは復旧だけでなく、浸水対策の外構工事までやってくれて、店は以前よりもより良い状態になることができた。もちろん店内の消毒も、知り合いの専門業者を連れてきてくれた。

そして工事も終了し、浸水被害から1カ月半後、ついに柏谷食堂は再開の日を迎えることができた。

準備を整え、のれんを出しに店の前に出ると、田中を含めた多くの近隣住民たちが開店を待っていてくれた。

実花は涙を堪え、彼らに頭を下げる。

店は少しずつ、かつてのにぎわいを取り戻していく。おいしそうにご飯を食べる皆の表情を見て、実花はもう2度と、この景色を失わないようにしようと固く誓った。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。