約半日の長時間運転

「ありがとね。助かった」

無事にパーキングエリアへとたどり着いた明里は拓斗をトイレに連れて行き、外で飲み物を飲みながら待っている美理に声をかけた。

「ううん。ママ、大変そうだったから、私も何かしなくちゃと思って」

美理の言葉に明里は温かい気持ちになった。困っているときこそ力になろうと思ってくれる家族の力の心強さに、明里は思わず頰が緩んだ。

とはいえ、渋滞が解決したわけでなく、車の進みは遅かった。しかし車内ではしりとり大会が開かれ、子供たちは渋滞の間も楽しく過ごしてくれていた。

結局、義実家に着いたのは9時過ぎだった。

玄関前に車を止めると、どっと疲れが出てくる。到着に気づいた義母が眉をハの字にして玄関から駆け寄ってきた。

「みんな、暑かったでしょう。よく来たね。大丈夫だった?」

義母の言葉に子供たちが弾んだ声で応える。

「うん、いろいろあったけど、楽しかったよ!」

「私も! 2人でしりとりしてたんだ」

「そうなの。いいわねぇ。早く中に入りなさい。みんな、待ってるから」

義母に促され、子供たちは車を降りると駆け足で義実家に入っていく。

「明里さんも、お疲れさま」

運転席に回り込んだ義母に声をかけられた。

「お待たせして申し訳ありません」

「いいのよ。何度か電話しようと思ったんだけど、余計に邪魔しちゃうと思ってね……」

「お気遣いありがとうございます」

明里は車のなかで深々と頭を下げた。

「車はね、ここに止めてていいから。明日、明るくなってから駐車するところ教えるわね。とにかく今は、中に入って」

明里は車から降りて、久しぶりに地面を踏みしめる。

「本当に疲れたでしょう。ご飯、用意してるからたくさん食べて休んでちょうだいね」

義母の言葉に反応するように、おなかが鳴る。今日1日、自分がほとんど食事をしてないことすらも気付いてなかった。

「ありがとうございます。もうおなか、ペコペコです」

優しく頰を緩めた義母に促されて玄関へ入ると、奥の居間から明かりとともに楽し気な子供たちの声が漏れてくる。来て――いや、無事に来ることができて良かった。

明里は脱いだ靴をそろえて、居間に向かった。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。