“借金地獄”に陥った富永さんの悲痛な胸中
あれから数年たった現在、今でも彼は相続した借金を返済している。年間の返済額は200万円。返済が終わるまではまだ10年近くあるようだ。
「俺はあと10年は借金を返し続けるだけの生活になるのか……俺の人生って何なんだろうな」
偶然地元の八王子駅でばったり私と再会した富永さんは遠い目でそうつぶやいた。
詳しく話を聞いていけば、富永さんはこの件がきっかけで奥さんとは離婚。子供とも離れ離れの生活を送っている。子供は現在高校生だが、大学進学にあたっては奨学金を利用するとのこと。
私は今回の話を記事にする許可をいただくにあたり富永さんから1つの条件が提示された。それは「相続で借金を背負う可能性があることの注意喚起をする」ことだ。
富永さんの父・守さんは事業を行っていたとはいえ苦しいそぶりを見せていなかった。にもかかわらず3000万円もの膨大な負債を抱えており、それが死後まで発覚しなかった。
このように、額の大小はあるかもしれないが、昨今の社会情勢を踏まえると誰しもがひっそりと負債を抱えている可能性は十分にある。つまり相続によって後々予期せぬ額での負債が発覚して、今更相続放棄もできず時間をかけて返していかなければならないということは誰の身にも起こりうるのだ。
相続は人生でそう何度も経験するものではない。大抵の場合2回前後だろう。だからこそ、しっかりと手続きをしなければならない。また、相続は誰しもが不慣れな手続きだが、どんなに忙しく、どんなに大丈夫だろうと思っても絶対はないということを忘れてはならない。
隠れた負債が後々発覚しても、相続放棄も何もできず自らが返済していくほかない。そんな状況にならないためにも、相続時には3カ月内に徹底的な調査を行うようにしていただきたい。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。