これから始まる義きょうだいとの戦い
義父が亡くなった後、近くに住んでいる義姉は、夫をけしかけ、義母を言葉巧みにだまして、義父母の通帳を持ち出し、貯金を下ろしていた。
「義姉は義父が亡くなった後も、仕事を言い訳にして、めったに義母に会いに来ていませんでした。もちろん私への感謝の言葉なんて、一度もかけてもらったことありません。義弟からも義妹からもありません。義母の貯金の世話はできても、義母の身体の心配なんて少しもしていなかったのではないでしょうか」
義きょうだいたちからは、二言目には、「ばあさんの金を使うな!」とばかり言われていた。
義母が入退院を繰り返すようになった時、義兄は、「もうここまで生きたのだから、そろそろあっちの世界に逝ってもいいよ」と、耳が遠くなった義母の前で平然と言っていた。
それを知ってか知らずか、亡くなる前日に義母は、「あの子(義姉)は、私を全然介護せず、あんたにばかり看させた。あの子(義姉)は、あんたのようには介護できんかったと思う。あんたに感謝もせずに……あの子は阿呆じゃ!」と鈴木さんにこぼした。
しかし時すでに遅しだ。鈴木さんの夫が亡くなった時、義父が遺言を作ろうとしたにもかかわらず、義母はそれを止めた。結局遺言書を作らないまま義父は急死し、義母も亡くなってしまった。
義母の死後、義姉夫婦は、義父母の口座がある金融機関へ行き、「義父が亡くなった後から現在までの、入出金の履歴を出してほしい」と依頼していた。
「私が義父母のお金を使い込んでいないか疑っているのでしょう。私が同居して義母の介護をしているのに、『家賃を払え!』なんて言われたこともあります。実際、夫の跡を継いで、田畑をわが家の長男が耕していますが、これも、義姉夫婦に言われて、義母に借地料を払わされていました。それなのに、義母の介護をプロや施設のお世話にならず、私が在宅で介護したらタダ……なんておかしいですよね?」
これから相続の話になる。
「下手したら私や子どもたちがこの家を追い出されかねないと思って、一応、弁護士さんに相談しています。なので、この家に住み続けられるかどうかは、これからです」
鈴木さんの夫が亡くなった時、すでに義父は85歳だった。長男を後継者と決めたその時に、義母を説き伏せ、長男に名義変更しておくべきだったが、後の祭りだ。6月に四十九日と納骨式が終わり、肩の荷が下りた鈴木さんだが、“嵐の前の静けさ”に戦々恐々としている。