<前編のあらすじ>
相談者の恵理子さん(50歳・仮名)は、夫と高校生の子供と暮らしています。春からは定年退職をするお父様との同居を予定しています。しかし、お父様は年金の加入期間が足りておらず、退職後は無年金。一切の収入がありません。
そこで、「父が扶養に入った場合、家計への影響はどんなものがあるのか」と心配した恵理子さんが、FP前田菜緒さんの元に訪れました。
●父はなぜ無年金になってしまったのか? 前編【「老後の収入は一切ありません」無年金の父が扶養に…娘が被った迷惑】からの続き
年金とはいわば「保険」である
老後の年金は、高齢で働けず収入がなくなったり減少したりした時のために備える保険です。その保険に加入しないのであれば、自分で資金を準備する、子どもを頼るなどの方法が考えられるでしょう。
とはいえ、何歳まで生きるか分からない高齢期の生活費を自分で全て準備するのは至難の業です。
仮に老後の生活費を15万円と見積もり、その生活が25年続くとすれば4500万円が必要です。ここに医療費や介護費用の備えも必要と考えると、簡単に短期間で準備できる金額では決してありません。実際、恵理子さんのお父様の貯金も300万円程度しかありませんでした。
また、お父様の場合は子どもの家でお世話になることができましたが、世の中には必ずしも子どもの世話になれる人ばかりではないでしょう。だからこそ、社会全体で支え合う方が確実で効果的なため、年金制度が存在するのです。
ちなみに、「収入がないなら生活保護という手段もあるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、原則生活保護を受けられるのは、“家族からの支援を受けられない人”だけです。
仮にお父様が生活保護を受けられたとしても、収入申告やケースワーカーの家庭訪問指導などが行われます。生活保護とはいわば国民の税金で生活することでもありますから、恵理子さんもお父様もそれを望んでいません。