<前編のあらすじ>
74歳のすず子さん(仮名、以下同)は、80歳の夫・勝郎さんが施設に入居してから、絵画教室に通うなど自由な日々を謳歌しています。しかし、それは50年もの間、勝郎さんのモラハラに耐え続けた結果でした。
勝郎さんはくも膜下出血で倒れ、延命治療を拒否していましたが、すず子さんは延命治療を選択します。夫の意思に反して延命治療を選んだ理由は、年金にありました。
●前編:【「今は充実しています」とニコリ…50年の我慢の末に悠々自適な生活を楽しむ妻、夫が望まぬ延命治療を続ける「恐るべき理由」】
「年金のため」の選択は正しいのか
確かに勝郎さんが亡くなると勝郎さんの年金は受け取れなくなります。しかし、勝郎さんが生き続けることによって医療費や施設費がかかります。果たして、「年金のために生かす」選択は正しいのでしょうか。
ここで年金と医療費の整理をします。まず、勝郎さんの年金は老齢基礎年金6万円、老齢厚生年金14万円の合計20万円です。ここから、税金と社会保険料を除くと手取りは約17万円です。一方、勝郎さんにかかる毎月の医療費は1〜2万円、施設費が15万円、すず子さんがお見舞いに行くための交通費などが5000円、合計約17万円で勝郎さんにかかる収支は、ほぼトントンです。では、仮に勝郎さんが亡くなると収支はどう変化するでしょうか。