すべてを知った米田さんが下した決断とは

現在、米田さんは地元の中古自動車販売店にて正社員として働いている。キャリアアップ助成金制度の真実を知ってから、前の会社は10カ月ほどでやめてしまったようだ。

「私には耐えられませんでした。自分が助成金のダシにされてしまっていたことも、これから応募してくる未来の後輩たちに、自分と同じ気持ちを味合わせることも」

彼女は退職の理由を赤裸々に語る。

キャリアアップ助成金は本来正規雇用化を促すための助成金だ。しかし、悪質な運用をする企業によっては、非道徳的に利益を得ていたり、求職者に不安定な立場で働くことを強いていたりするケースも生じ得るため、転職時には注意していただきたい。

「非正規雇用スタート。6カ月経過後に5%の給与アップと共に正社員化」という求人があれば、その企業はキャリアアップ助成金の要件に合致している可能性がある。不明点があれば、面接時に詳細を尋ねるか、ハローワークや労働局の相談窓口に問い合わせることなども有効だろう。

キャリアアップ助成金の利用自体は違法ではなく、適切に活用する企業も多い。すべてが悪というわけではないが、用心するにこしたことはない。米田さんのように、不本意な働き方をすることにならないためにも。

※キャリアアップ助成金の利用は違法ではなく、本稿は一部に見られる運用上の課題について問題提起することを目的としています。またキャリアアップ助成金の支給額・条件は制度改定により変更される場合があります
参考:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。