繰り返される宅配便の到着

理絵の気持ちは露とも知らず、一美は相変わらず好き勝手に買い物をし続けていた。

玄関ポーチのハロウィン飾りをようやく片づけ、ついでに掃き掃除やらクリスマス飾りの用意やらをしていると、門の向こうにすっかり顔なじみになってしまった宅配便のお兄さんの姿が見えた。お兄さんは大きな段ボールを2つほど抱えていた。もちろん荷物の宛先はどちらも一美だ。

理絵はお兄さんから荷物を受け取り、サインをし、掃除を中断して家のなかへと運んだ。

「お義母さん、お届け物ですよ」

理絵がそう声をかけると部屋から早足で一美がやってきた。

「あら思ったよりも早かったわね〜」

「何を買われたんですか?」

「えっとね、トースター。他は日用品をまとめ買いしたのよ」

一美の言葉に理絵は目を丸くする。

「トースター? 本当にトースターを買ったんですか?」

「ええそうよ。何をそんなに驚いてるの?」

「だってついこの間、新しいのを買ったばかりじゃないですか?」

伝わらないと分かっていながら、理絵は不満を口にする。案の定、一美は小首をかしげているだけで、理絵の言いたいことの半分も理解はしてくれない。

「そうだけどこっちのほうが高級なやつよ。お水を入れたら外がカリッとして中はもちっとした感じに仕上げられるんだって。テレビでも宣伝してたからほしかったのよ」

「そんな高いものを買ったんですか……?」

一美の言ってるメーカーのものであれば、4万近くはするものだ。

「そう思うでしょ? でもね、ブラックフライデーセールで3割引だったのよ。だから今のうちに買っておかないとって思ってね」

一美は嬉しそうに話していたが、理絵は反論せずにはいられなかった。

「買い換えたばかりなんですよ。必要ないものは買わないでくださいよ」

「何を言ってるの? 別に2個あったって困るようなもんじゃないでしょ」

そう言って一美はトースターの入った段ボールを持ってリビングに向かっていく。全く悪びれた様子も反省した様子もない一美の背中を見て、理絵は深いため息を吐くしかなかった。

●浪費癖のある義母・一美は、理恵と夫・浩司の苦言に耳を貸そうとしない。そんな義母の行動が思わぬトラブルへと繋がっていく…… 後編【「本当よ! こんなお店で買い物なんてしてないわ!」50万円の使途不明金に泣き叫ぶ義母…明らかになった衝撃の真相】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。