義母を甘やかす夫との温度差

理絵はキッチンから一美に声をかけた。

「お義母さん、それなんですか?」

「ああこれ? マッサージ器よ。安かったから買ったの。海外のサイトから買ったんだけど思ったよりも早く着いてね」

「前にも同じようなの買ってなかったですか?」

「あれはダメ。全然効かなかったから。もし良かったら理絵さんにあげるけど?」

「いえ、いいです」

理絵は笑顔を作って即答で断り、料理を始めた。

   ◇

眠りにつく前、理絵は浩司にマッサージガンのことを報告した。

「ねえ、お義母さんに買い物を控えるように言ってよ。安いものじゃないんだよ」

理絵がそう訴えるが浩司は厳しい顔でうなる。

「いやうーん、でもまだそこまでじゃないし。大丈夫な範囲内だからさ」

「どんどん使う額だって大きくなってるんだよ。明らかにエスカレートしてるって。あなたが言えないのなら3人でちゃんと話し合う場を設けようよ」

「いや、俺から直接言うよ。理絵が言うと変な方向に揉めそうだし」

「……さすがにちょっとお義母さんに甘いよ?」

「前にも話したけど、母さんに恩返しをしたいんだ。母子家庭で育ってずっと母さんには苦労をかけてきたんだよ。大学だって行かせてもらったし、そんな母さんにさ、少しでも楽しい思いをしてもらいたいんだよ……」

浩司の言葉を聞き、理絵は言葉に詰まった。

理絵も子育てを経験しているからこそ母子家庭の大変さは想像ができる。そんな一美に恩返しをしたいという浩司の気持ちも理解できた。

「カードの明細は俺が毎回チェックしてるから。もし目に余るような使い方をしてたら俺がちゃんと言うからさ。な?」

たとえ分かっていなくても、分かったふりをする以外に理絵にとれる態度はなかった。