母親から逃れた先で直面した新たな困難
香菜さんの仕事は、受付、会計業務、保険証や診察券の確認、診察券の発行やカルテの作成、患者を診察室へ案内する、医師に患者の容体を伝えるなど多岐にわたりました。
医師や看護師と連携をとる際に厳しい対応をされたり、患者からクレームを受けたりすることもありました。さらに頭を悩ませたのは職場での人間関係。うわさ話や陰口を好まない香菜さんは、話を合わせることがどうしてもできません。
業務は多忙を極め、職場の人間関係も良好とは言えない。そのようなストレスで、香菜さんは自宅に帰っても心が休まらなくなってしまいました。夜、布団に入り目をつぶると、職場での失敗や叱責、患者からクレームを受けた出来事がまぶたの裏に浮かんできてしまうのです。
香菜さんもそんな回想なんてしたくありません。でも、どうやっても自分でコントロールすることができませんでした。
「明日も失敗したらどうしよう……」
そう考えるだけで動悸がして呼吸が苦しくなる、冷や汗が出て強い不安に襲われる。布団の中でじっとしていることが苦痛で仕方がありませんでした。
そんなある日、十分な睡眠をとれなかった香菜さんは、経験したことのない体のだるさや頭の重さのため寝床から起き上がれなくなってしまったのです。そしてこの日から香菜さんは職場へ向かうことができなくなりました。
「早く職場復帰しなければ」
その一心で香菜さんは近所の心療内科を受診することにしました。
医師からは、ストレスによりうつ状態にあるとの診断を受け、しばらく会社を休むようアドバイスされました。香菜さんは医師の指示に従い、しばらく休職することにしたそうです。しかし有給休暇をすべて消化して休んでいても、うつ状態は改善しませんでした。
