命綱の傷病手当金が“1年6カ月”で終了する現実
そこで香菜さんは傷病手当金を受給することにしました。
香菜さんの傷病手当金は月額換算で17万円程度。生活はかなり厳しくなりましたが、就労による収入がない香菜さんにとって傷病手当金は命綱そのものです。
ただし傷病手当金は、支給を開始した日から通算して1年6カ月分の傷病手当金を受給すると終了します。香菜さんはそれまでに職場復帰を目指そうとしましたが、職場に戻ることを考えるだけで体が震える、涙が出てくる、食欲がなくなる、不安で眠れなくなるといった症状が出てしまうのでした。
さらに状況は悪化していきました。うつ状態が長引き脳の機能が低下したためなのか、幼少期のつらい記憶が何度もフラッシュバックするようになってしまったのです。
「なんでこんな簡単なこともできないの? もういい加減にしなさい!」
母親の怒鳴り声。テーブルを叩く大きな音。母親に腕をつねられ、平手で頭を叩かれても我慢するしかなかった幼少期の自分。そのような映像が脳裏にはっきりと蘇ってくるたびに香菜さんはパニックに陥り、過呼吸になってしまうのでした。
職場復帰をしなければならない、といったストレスでうつ病が悪化してしまった香菜さん。医師と相談した結果、やむなく退職することにしました。
無収入の恐怖に直面して頼った相手は…
退職後、香菜さんの頭の片隅には実家に戻ることも浮かびましたが、その考えはすぐに振り払いました。
「母親のいる実家に帰るなんてとてもできない。もう頼れる人は叔母さんしかいない」
決死の覚悟で香菜さんは叔母に電話をしました。
香菜さんは泣きながら叔母に事情を説明。叔母は香菜さんの話を遮ることなく聞いてくれました。
叔母の夫はすでに亡くなっており、子どもは就職を機に実家を離れていたため、叔母は現在一人暮らしをしています。その寂しさもあったのかもしれません。助けを求めてきた香菜さんを一時的に受け入れることにしました。
●実家を離れ叔母の温かい支援を受けることになった香菜さん。彼女の人生が迎えた新たな展開とは? 後編【毒母の呪縛から逃げても襲いかかる“無収入”の恐怖…27歳女性をどん底から救った月5万1983円の命綱】で詳説します。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
