無料相談で判明した時効の意外な弱点

だがここに1つ大きな落とし穴がある。

相続人が被相続人の占有期間を引き継ぐ場合、占有の開始理由も引き継ぐことになる。つまり、匠さんが園田さんの占有期間を引き継ぐと、匠さんが何年所有の意志を持っていたとしても時効は成立しないというわけだ。

ただ、この落とし穴の存在に冨浦さんもすぐに気づけたわけではない。たまたま見つけた無料の法律相談会にて聞けたアドバイスだった。

「この知識を得られたのは本当にたまたまでした。もし何も知らなければ私は土地をあきらめていたかもしれません」

彼は当時のことをそう振り返る。

さて、彼が長々とこんな話を私にしている理由だが、どうやら彼は無料相談会で聞いた内容をもとに私のところへ相談に来たようだ。聞けば内容証明郵便を送付したいらしい。

私は彼の話を聞き、時効が成立していないため期間を定め土地を明け渡すように請求した内容証明を作成して送付した。おそらくはこれで匠さんも諦めて土地を明け渡すなり、改めて賃貸であることを認めるかのどちらかとなるはずだ。