重苦しい空気の中、家族面談がスタート
家族面談当日。筆者は両親が住む自宅を訪れました。母親に案内されてリビングに入ると、賢吾さん、父親、そして賢吾さんの兄が座っていました。筆者は3人それぞれに挨拶をしましたが、皆の表情は険しいまま。重苦しい空気の中、面談がスタートしました。
「これからはご両親が月に23万円の援助をし続けるのは難しい」という切り口から、筆者はまず生活費の見直しを検討するところから始めました。
賢吾さんは一人暮らしですが、生活費だけで月15万円もかかっています。一体何に使っているのか? 筆者が内訳をヒアリングしたところ、賢吾さんは苛立った様子になり早口でまくしたてました。
「何にいくら使っているかなんて、いちいち覚えていませんよ! 仮にそれが分かったとしても節約なんかできません。今の生活費でもギリギリなのに。俺からすると、もっと援助してほしいくらいです」
「そうですか……。それでは、もう少し安価な住まいに住み替えるのはどうでしょうか?」
「無理です。今住んでいるマンションが気に入っているので、住み替える気持ちはさらさらありません」
そこで筆者は別の角度から提案をしてみました。
「まずは就労支援を受けて、パートで働けるようになることを目指すのはどうでしょうか? この際、賢吾さんが生活費のすべてを稼げるようにならなくてもよいと思います。月10万円くらいの稼ぎでも、親御さんの負担はだいぶ軽減できますし」
すると賢吾さんは、ふんと鼻を鳴らしました。
「何度か働いたことがあるので嫌というほど分かっているのですが、俺は働くことに向いていません。俺はそういう人間なんです。ひょっとしたら発達障害があるかもしれないし。といっても、今まで病院を受診したことはないので、はっきりとしたことは分かっていませんけどね」
どうやら賢吾さん自身も、自分には発達障害があるかもしれないとうすうす感じているようです。発達障害は精神疾患であり、障害年金の対象になります。
そこで筆者は次のような話をしました。