ひきこもり状態にある方で精神障害をお持ちの場合、病院を受診したのち障害年金の受給を検討します。しかし、本人が病院の受診を断固拒否することも。その場合はどのような対策が考えられるのか、あるご家族の事例を通して見ていきます。

高校中退から43歳の今もひきこもり状態の息子

働いていない次男(43歳)について相談したい。そのようなことで母親(72歳)が筆者のもとを訪れました。

相談者の家族構成は次の通りです。

次男 立川賢吾さん(仮名) 43歳 無職無収入。両親と別居で一人暮らし
父親 74歳 会社員
母親 72歳 無職
長男 45歳 既婚。家庭があり両親と別居

賢吾さんは無職なのに、なぜ両親と別居しているのか? 筆者はその経緯から伺うことにしました。

賢吾さんは幼少期から落ち着きがなく、不注意も多くみられたそうです。勉強がまったくできず、中学校の成績は1や2ばかり。このままでは高校進学も危ぶまれました。賢吾さんは「もう勉強はしたくない。高校は行きたくない」と強く主張しましたが、両親は認めませんでした。

なんとか進学した高校は、喧嘩、喫煙、飲酒などをする素行不良の生徒が多く、今では考えられないことですが、教師からの体罰も日常茶飯事だったそうです。賢吾さんは勉強が苦手、宿題や提出物を忘れるといったことで、教師から厳しい指導を受けていました。さらに、クラスメイトからいじめを受けることもありました。

そのような日々を送っていた賢吾さんはとうとう限界を迎え、高校2年生の時に中退してしまいました。

高校中退後、賢吾さんはコンビニやスーパーでアルバイトをしたこともあるそうです。しかし、仕事がなかなか覚えられない、作業が遅い、何度注意を受けても行動が改善しないといったことでいじめや嫌がらせを受け、どのアルバイトも長続きしませんでした。

働くことに心底嫌気が差した賢吾さんは、その後ひきこもりのような生活を送るようになりました。