夫の気遣い「主婦休みの日」

後日、食後に皿洗いをしていると脩人に声をかけられた。

「あのさ」

驚いて振り返ると脩人が頭を掻いて立っていた。

「え? 何?」

「9月25日って何の日か知ってる?」

少しだけ考えて首を横に振る。

「いや、わかんない」

「何か主婦休みの日らしいんだよ」

「何それ?」

聞いたことのない話だった。

「ちょうど日曜日だし、その日はもう家事も何もしなくていいよ。好きなことをして遊んできたら良い。俺が家事とかは全部やるから」

そう言うと背中を向けてリビングを出ていってしまった。呆気にとられていたが、思わず笑ってしまう。気を遣って言ってくれたのが伝わってきた。

だとしたら遠慮なく休ませてもらおう。亜美はそう決めて皿洗いを再開した。

   ◇

約束の9月25日、亜美は久しぶりに実家に帰り、学生時代の友人と会うことにしていた。

車で実家に帰り、母に当たり障りのない近況を話したあとで約束をしていた喫茶店に向かい、友人の聡子と雑談を楽しんだ。久しぶりに学生時代に戻れたような気がした。

しかし隣の席の子供がジュースをこぼしてしまい、母親が慌てて拭いているところを見たとき、亜美はふと家のことを思い出す。

博樹はサッカーの練習があるから家にはいないが、孝明の世話も家事だって脩人がやらなくてはいけない。しかし脩人に孝明の世話をしながら家事をこなすなんてことが到底できるとは思えなかった。

ひとたび思いついてしまうと、心の中の不安は瞬く間に膨れ上がっていった。

●家事・育児に非協力的な脩人に疲弊する亜美はブチギレ! 反省した脩人は主婦の休日を提案するが…… 後編【「こんなの無理だ…」妻不在の家は修羅場! ワンオペでの家事・育児の地獄を見た夫が語ったリアルな本音 】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。