大切な着物を荒らした孫に謝罪させない息子

私の声に驚いた息子と嫁が慌てて2階に上がってきましたが、嫁はわびるでもなく、きょとんとした孫を抱き上げるとさっさと階下に下りていってしまいました。

息子に「悪いことをしたら、『ごめんなさい』を言うのが当たり前でしょ」と苦情を言うと、「一方的に𠮟りつけるのは子供が委縮するから良くないんだよ」と澄ました顔です。

その日はあいにく前日からの雨模様だったのですが、私の機嫌が悪いのを察した夫が「ショッピングセンターにでも行こうか」と息子一家を誘って出かけていきました。この時ばかりはさすがに私に下の孫を預けていくわけにはいかないと思ったのでしょう。下の孫も一緒に連れていったようでした。

留守になった自宅でひとり、2階の片付けをしました。大事な着物なので、一点一点確認しました。幸い、着物は無事でしたが、たとう紙が破られたものは幾つかありました。全てをしまい直した後、やむをえず、桐ダンスに目張りをして引き出しが開けられないようにしました。

その日皆が帰宅したのは17時過ぎでした。

息子が両手に子供服店の大きなビニール袋を提げていたので「あら、ずいぶん買い込んだのね」と言ってやったら、「ちょうど夏のバーゲンだったんだよ。子供の服はいくらあっても足りないからさ」と固い声で返してきました。

大方お財布は夫なのだろうと夫の方をにらんだら、分かりやすく目をそらされました。

急いで夕食の支度をしようとすると、夫が「今日は寿司でも取らないか」と言うので、近所の寿司店に大きな寿司桶の特上握りのセットを頼みました。

新鮮な地魚を揃えたその店の寿司を魚好きの息子はうれしそうに頬張っていましたが、上の孫は「どうしてサーモンがないの?」とか「もっと甘い卵焼きがいい」とぐずり、なかなか箸が進まないようでした。挙げ句、私が買っておいたプリンを2つ平らげ、「こっちの方がおいしかった」とけろりとした顔で言うのですから脱力してしまいます。