訴訟をちらつかせる妹、ついに観念した姉
その後、改めて恵子さんは美香さんを自宅へ招き話をしたが、美香さんの意志は固く、法定通り相続したい気持ちは変わらないようだ。それもそのはず、誰だって突然、自身に相続する権利が認められたお金が降ってきたとあれば、それをみすみす逃すことはしないはずだ。
それはおそらく恵子さんも同じ……。
いざ当日、対面すると美香さんは「絶対に私は1500万円、父の遺産を分けていただきます」と強く言い放ったという。
だが、そんな法的な根拠があっても、いきなり現れた妹に「はい、分かりました」と素直に財産を譲る気分にはなれない。それも1000万単位の額の財産ともあればなおさらだ。
最終的には「どうしても……なら出るところに出ますけど。でも、唯一の家族である私たち姉妹で争うのは父も本意ではないかもしれませんよ?」と訴訟をちらつかせる美香さんに対して恵子さんは観念した。半分ずつ、すなわち1500万円の遺産分割に応じた。
話を聞かせてくれた恵子さんは私にこうも述べていた。
「父の人生です。なにかあったのでしょう。でも、せめて生前は無理でも、死後に手紙でもビデオレターでもSNSでのメッセージでもなんでもいい、直接父の言葉で知りたかった」
私は何も言えず、ただひと言「そうですね」とだけ返した。
もし、読者の中に自身の子どもに伝えていない、他の兄弟姉妹の存在があるならば、できるだけ早めに伝えてあげてほしい。死後のビデオレターであっても手紙でもなんでもいい。少なくとも自身の言葉で伝えてあげるべきだろう。
それまで接点がなくとも、子ども同士は相続においては接点を持たずにはいられない。その時、起こりうる衝突を防ぐことができるのはあなただけなのだ。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。