<前編のあらすじ>

「これまで、父の子はずっと私1人だと思っていました」と語る恵子さん(仮名、50代女性)。父の死後、遺品整理中に突然届いた1通の手紙が彼女の人生を一変させた。

差出人は父から認知を受けた婚外子の美香さん(仮名、40代女性)で、相続について話し合いたいという内容だった。

恵子さんは「婚外子の相続分は半分」という古い知識を頼りに安心していたが、実際には法改正により婚姻内外の子の相続分は既に平等になっていた。父を支え続けた自分と、ほとんど関わりのなかった妹が同等の権利を持つという現実に、恵子さんは深い怒りと混乱を覚える。

●前編:【「私はあなたの妹です」遺品整理中に届いた手紙で父の“婚外子”の存在が発覚…遺産3000万円をめぐり始まった姉妹の争い】

藁にもすがる思いで法律を調べ尽くした結果

恵子さんは美香さんと解散した後も衝撃的なやりとりが頭に残っており、そこから数日は何も手につかなかったという。そして、1週間ほど過ぎたあたりで美香さんからSNSを通じてメッセージが来た。「先日はありがとうございました。また近いうちに話をしたいのですが……」といった内容だった。

「そのメッセージを見た瞬間、私は相続に関する情報を調べあさりました」と恵子さんは口にする。聞けば、どうすれば妹に相続をさせずに済むか、というところまで調べたらしい。

相続に携わる私には分かる。この場合、美香さんに相続をさせないことも、相続分を法で定められている等分から変化させることも実質的に不可能だろう。

なぜなら、相続させないということは相続放棄させることと同義だからだ。相続放棄は基本的に強制させることができない。かといって美香さんを除いて勝手に恵子さん1人で相続手続きをしたとしても、それは無効だ。となれば残された手段としては話し合いで解決するほかない。

実際に法制度を調べあさった恵子さんもそれは理解していたようで、「来週末、またうちでお話しませんか?」とだけ美香さんに送信したようだ。