「どこか……家の空気が違うんです。前はこんなに他人を入れる家じゃなかったのに」

私にそう語りかけるのは今回の相談者の長野さん(仮名・40代男性)。

長野さんは2年前に転勤となり地方での勤務が始まってから、父・宗司さん(仮名)とは疎遠になっていた。母はすでに他界しており、宗司さんは一人暮らしだ。電話では元気な様子で、地域のボランティア活動を生きがいにしているとも聞いていたため、安心しきって疎遠となっていた。決して険悪な仲になったのではない。

2年の間に一体何が起きていたのだろうか。

発覚した父の500万円送金の真相は…

「机の上に、何か若者向けの起業資料みたいなのが置いてあって。見慣れない名前が書いてあるんですよ」と語る長野さん。

彼は2年の転勤を終えて実家に帰ってきたところ、家の雰囲気がおかしいことに気付いたという。悪いとは思うものの「何かある」と気持ちが抑えきれず、宗司さんのパソコンを確認してしまったとのこと。

すると、そこには数十万円もの大金を数カ月おきに振り込んでいるネットバンキングの履歴があった。もちろん出金されているのは宗司さんの口座からで、振込先は“ある一人の男性”だった。その総額はなんと500万円にものぼっていた。

不審に思い引き続きパソコンを確認していくと、その男性と頻繁に連絡を取り合っていることに気付く。メールフォルダを確認してみれば「地元活性化の夢のためにまた出資を……」などとお金を要求されているメールが何通も出てきた。

「最初は詐欺かと思いました。父はお金にうるさい人だったし、まさかそんな“訳の分からない若者”に……って」

最初は何かのゆすりかと思ったのだが、調べれば調べるほど、宗司さんがその若者と自発的に関係を築いていたことが分かって、長野さんの顔は蒼白になった。