あり得ない発言をする義父についにブチ切れた
由美穂は経理の仕事を工場内にある小さな事務所で行っている。工場長である藤次や修司は現場で働き、愛子は工場の仕事には関与していない。
大きな会社のように経理の部署があるわけではないので1人で作業をすることが多いのだが、給付金や決済関係の書類を処理しないといけないときは藤次と2人きりになることも少なくなかった。
「由美穂さん、最近、疲れがたまってないか?」
「いえ、そんなことないですよ」
こういう状況では大体いやらしい発言をしてくるので、由美穂はどうしても身構えてしまう。
「そうかなぁ。ちょっと疲れが顔に出ている気がするが……」
そう言いながら、藤次がこちらを見ている。
「もしかして、昨日の夜はアレかい?」
「……何ですか、あれって?」
「夜通し……アレっていえばアレのことだよ」
にたりと笑う藤次の顔に気色悪さを通り越して怒りが湧いた。できるだけ声を押し殺し、鋭い視線を藤次に向ける。
「……そんなの言うわけないでしょ? ふざけたこと言ってないで、仕事してもらえます?」
途端に藤次は怯えた表情になる。
「あ、ああ、邪魔だったかな。いやちょっと体が心配だったからね~。元気なら、それでいいんだ、うん」
そして1人で何かつぶやきながら、事務所を出て行ってしまった。
夫に報告した、その後…
その夜、さすがに我慢ならなくなった由美穂は修司に報告した。修司はそのまま寝室を飛び出し、藤次にキツく注意をしてくれた。
藤次とはやや気まずい関係になったが、毎日のありえない言動は鳴りを潜めた。時を同じくして藤次は重い病気をわずらい、あっという間に他界。工場の経営は息子の修司が引き継ぐことになった。
不謹慎だが、これで少しは家での時間も過ごしやすくなると由美穂は思っていた。
しかし由美穂が思い描くようなことにはならなかった。愛子の存在が由美穂を悩ませることになるのだ。
●義父がいなくなり安堵したのも束の間、今度は義母に異変が……。 後編【「お父さんに色目でも使ったんだろう」義父が亡くなりモンスター化した義母を黙らせた「夫の覚悟の行動」】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。