田中さんが迎えた「寂しすぎる結末」
インターネット通販ではクーリングオフが適用できないとはいえ別の制度が利用できる。それは通常の商品の返品だ。店舗で買った商品でもレシートを持っていけば返品してお金を返してもらうことができるあれだ。インターネット通販においてもそれは利用できる。
「一般的には通販サイトには規約が存在しています。その規約に基づき返品をします」
私は2人に説明する。田中さんと剛さん、両名とも顔が明るくなる。
だが、急いでサイトの返品規約を確認していくと、購入から30日内や8日内など、サイトによって期日はばらばらだ。また返品条件も「未開封であること」などといろいろ条件付けされており、全てが返品できるわけではなかった。むしろほとんどが返品できない状態だった。
その額実に80万円超。田中さんの老後資金の一部を切り崩すしか方法がない。田中さんと剛さん、そして私との間には重い空気が漂った。
田中さんはそれ以来、剛さんによってインターネットの利用を監視されている状態だ。インターネット通販サイトは軒並み利用を禁じされた。
相談から数年たった今も田中さんはインターネット通販サイトを一切使えていない。それについて田中さんは「仕方ないことだと思うけど、楽しみを失って寂しい部分がある。心にぽっかり穴が空いたみたいです」と語っている。
今、インターネット通販サイトを利用する高齢者は決して珍しくはない。その影響からか通販サイトで過剰な買い物をしてしまう高齢者の存在もじわじわ問題になりつつある。高齢者の買い物はクーリングオフで解除できるものも多いが、インターネット通販サイトはその対象外だ。
身内の高齢者の買い物について「クーリングオフがあるから」と特に中止をしていない場合、そこには大きな危険が迫っているかもしれない。クーリングオフはメディアでいわれる程万能な切り札ではないことを、私たちは知っておかなければならないだろう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。