欧米のプロ投資家が狙った「ミセス・ワタナベ狩り」
この頃、海千山千のプロ投資家は、「ミセス・ワタナベ狩り」を仕掛けていた。日本の個人投資家が「円売り」のポジションを取りやすいところを逆手に取った「円買い」でジワジワと締め付けていた。「ミセス・ワタナベ」と総称される日本の個人投資家は、ひとり一人の動かせる資金に限界がある烏合(うごう)の衆にすぎない。さまざまな市場変転を乗り越えてきた為替取引のプロ集団に狙われて無事に生還することは非常に難しいと言わざるを得ない。1ドル=90円前後でもみ合っていた米ドル・円は、「ミセス・ワタナベ狩り」の円高誘導もあって2011年8月の1ドル=76.58円に向けて円高に進む。この間の変動率は18%強にもおよんだ。レバレッジ400倍で投資金額に対して0.25%の証拠金しか積んでいない投資家にとって0.25%でも価格が反対方向に動けば、証拠金が不足することになる。
2010年2月からは信託保全の義務化によって「強制ロスカット」が導入され、ポジションの解消と証拠金の没収が業界共通の制度になった。円売りでポジションを組んでいた個人投資家がポジション解消で円買いの反対売買を行うことで、円高が一段と進むことになる。このような負のスパイラルが起こると、円高が段階的に進むことになって、「円高を待って買う」ことで稼いできた個人投資家は、どんどん削られる結果になった。