相続財産がすっからかん……憤る長男
トラブルが起こったのは父の敏夫さんが亡くなってすぐのこと、遺産の分配について話し合った時だ。敏夫さんの遺した財産は500万円程度。決して大きな額ではないが3人で分けてもそれなりの額にはなる。ここは仲良く3人で均等に分けるものかと思いきや、異を唱える者がいた。長男の智徳さんだ。
「啓、お前は俺たちにおやじの遺産を返すべきだ。民法には特別受益がある」
ぽかんとする啓さんと正一さん。それに対して智徳さんは淡々と続ける。
「啓、お前はおやじから遺産の前渡しを受けていたようなものだ。これまでさんざんお金を出してもらっていただろう。おまけに家を出る際は住宅ローンの頭金ももらっただろ。それは特別な利益として、少なくとも住宅ローンの頭金400万円は俺たちに返還するべきだ」
確かにそうだ、啓さんへの支援400万円がなければ、遺産の総額は900万円になっていたはず。兄弟3人で300万円ずつ分けられたわけだ。それが現状は遺産が500万円のみ。兄弟1人あたり170万円弱になってしまっている。
智徳さんは相続の現状について考えた時、啓さんだけが遺産の大部分を独り占めしているように思え、個人的に法制度について調べていたようだ。そこで特別受益の存在について知り、先の発言に至ったようだ。
●対する啓さんの反論とは? また、静観していた正一さんにも「1人だけいい人ぶってんなよ!」とまさかの飛び火が……。後編【長男が激怒…「親から支援を受けるのは当然」父親の遺産を減らした次男の「身勝手な言い分」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。