母が決めた道

その日の夜に遥香は再度、和弘と話し合いの場を持った。

「これから先の話をしましょう」

和弘は暗い顔で頷く。

「まず離婚はしない」

遥香がそう宣言すると和弘は驚いた顔をする。

「でも条件がある。お金の管理は今後私がやる。もちろん金輪際、ギャンブルも投資も禁止。あなたはカウンセリングを受けて、きちんとギャンブルをやめること。これが条件よ」

和弘は何度も首を縦に振る。

「絶対にやらない。約束するよ」

もちろんその言葉に信用は何もなかった。ただ祐の将来を守るためには和弘の稼ぎは必要不可欠だった。遥香自身もパートの時間を増やしたりすることはできる。それでも圧倒的に金銭的には不安定だ。

だったら和弘にギャンブルをさせないように管理をして一緒に暮らすというのが最善だという考えに至った。

まずは祐を大学に通わせて就職までさせる。それが当面の目標だ。和弘とのことはその後になってしっかりと考えればいいと思った。絶望とか不安とかそんなものは言ってられない。とにかく祐のために全力を尽くすしかないと自分に言い聞かせた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。