<前編のあらすじ>
タワマンのママ会でボス的なママから親子参加のハロウィンパーティーに誘われた麻里子。過去のパーティーでは暗黙のルールで本格的な仮装が求められ、高額な外注費がかかったことも知る。
気が重くなる麻里子と対照的に夫は「子どもの遊びだろ」と一蹴し、無関心を決め込んでいた。
高額な衣装を用意することはできないが、パーティーに胸を躍らせている様子の息子・翔のために、裁縫が得意な母の助けを借りて自作を決断したのだった。
●【前編】「衣装に10万円?」タワマン上層階のボスママがハロウィンパーティーを主催、参加者に課された“試練”とは
息子の衣装は完成するも麻里子は私服で参加
上層階のパーティールームは、天井からバルーンが降り、フォトブースの背景が組まれている。照明は強く、完全に写真撮影用の光だ。音楽が小さく流れ、甘い香りがする。皆が思い思いの仮装を楽しむ中、麻里子は私服だった。
結局、翔の衣装が完成したのは前日の深夜。自分の分まで用意するような余裕はなかった。
出迎えたりおちゃんママは笑顔を貼りつけたまま、麻里子の全身に視線を這わせた。
「ママたち、みんなすごいコスチュームばっかりでびっくりする。親子で楽しもうって会だもんね!」
言い方はやわらかいが、明らかに麻里子に向けた非難の言葉だった。
近くで起きた笑いの輪が、麻里子だけを通り抜けていく。翔も不安そうな顔で麻里子を見上げていた。
