「これまで、父の子はずっと私1人だと思っていました。」

そう切り出したのは、今回の話を聞かせてくださった恵子さん(50代、女性)だ。彼女の穏やかな声の裏には、何とも言えない複雑な思いがにじんでいた。

今回は父の死後、嫡出でない妹の存在が発覚し、相続分でもめた恵子さんの事例を紹介しよう。

父の死後、突然届いた1通の手紙

父が亡くなった後、恵子さんは数カ月何も手につかず残った遺産、およそ3000万円の相続手続きも放置していた。しかし、夏が過ぎ、秋も過ぎ去ろうとしていたある日、「このままではいけない」と一念発起。相続手続きを進めるためにようやく重い腰をあげた。

「兄弟姉妹もおらず母も先に亡くなっているので、相続手続きは粛々と1人で進めるだけだと気楽に考えていました」

彼女は当時を振り返りながらそう語る。

だが、父の遺品を整理し始めてから数日後、タイミングを計ったかのように恵子さんの妹を名乗る1人の女性から手紙が届いた。

彼女の名前は美香さん(40代、女性)といい、恵子さんよりも年齢は下だという。
手紙には次のような内容が書かれていた。

「私はあなたのお父さんから認知を受けている娘で、あなたの妹に当たります。父が亡くなったと聞きました。相続の件も含め一度お会いできませんか?」

驚いた恵子さんは、同封された戸籍を見る。そこにはたしかに父が長年秘密にしていた婚外子の存在が記されていた。