雨の日によく体調を崩していた母

8月になり夏本番を迎えると同時に台風がやってきた。

夕方には風が強くなり、金切り声のような風の音が室内にいても聞こえるようになる。雨も降ってきていよいよ嵐が来る気配がする。

ベランダにあった物干し竿やプランターなどは室内に避難させていて安心だが、こんなときでも仕事に行った夫が無事に帰ってこれるのだろうかと心配になる。一応電話をかけてみようかとソワソワしていると、百合子の脳裏に布団で横たわる君枝の姿が浮かんできた。

常に元気だった君枝だが、強い雨の日はよく体調を崩していた。低血圧で雨が苦手なんだと言っていた。

百合子はカーテンを開けて外を確認する。空は真っ黒な雨雲でびっしりと埋め尽くされている。これからさらに強い雨が降ってくるであろうことは容易に想像できた。
途端に君枝のことが心配になった。君枝が一人で暮らすようになってから台風が直撃したことは過去にもあったし、雨なんて数え切れないほどあった。なのに今日に限って君枝が辛そうにしている記憶が蘇ってきた。

いても立ってもいられなくなった百合子は車の鍵を持って強い風の中車を走らせて実家へと向かった。

●台風の猛威の中、母の家へと急ぐ百合子を待ち受けていたものとは?後編『「助けないと」台風のなか80代母が徘徊!?娘が知らなかった「見知らぬ男の名前」と「辛すぎる真実」』にて詳報します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。