「あのとき手放さなければ……」
日頃から改善案を考えて事実上の経営者となっていた吉田さんは改善のポイントを知っていてもあえて言わず、高橋さんに任せていればいずれ会社の資金が底をつくことをコロナ禍のときから見通していたのです。
そして、コロナ禍の前からしっかり利益を出せるのをわかっていた居酒屋とスナックのみを店の設備や造作、在庫などを買い取り、格安で利益が期待できる事業を手に入れたのでした。
高橋さんはその後安いアパートへ引っ越し、派遣社員として生活していました。吉田さんに渡した店は以前と同様に繁盛し、そんな店の様子を見ながら「あのとき手放さなければ……」と後悔するのでした。
任せきりのツケと資金計画
今回高橋さんの事例からまず言えることが、「安易に仲間と起業しない」「経営は誰かに任せきりにしてはいけない」ということです。
代表者は全ての責任を負う人です。運営を他の役員に任せたとしても全ての結果の責任は自分にあるという意識が求められます。
しかし、高橋さんは仲間に経営をほぼ丸投げし、細かな数字をチェックすることもせず、問題が起きれば感情的に仲間に責任を追及するばかりで建設的な解決策を講じることもなく……。このような結果になってしまうのは必然と言えます。
仲間同士で起業することは、事業が上手くいっているときには関係は良好でも、売上の減少など何か問題が起きた時には仲間同士で責任のなすり合いになったり、トラブルになったりすることがよくありますので、勢いで始めず、誰が最終的な責任を持つのか、役割分担をしっかり決めることが必要です。