「気の合う仲間と一緒に会社をつくって、自分たちの理想のビジネスを実現したい」

そう考えて事業を立ち上げる人は少なくありません。信頼できる友人や仲間と起業し、役割分担しながら協力して事業を成長させていくことは理想の形のようにも思えます。

しかし、現実は時に厳しく、金銭や責任が絡む中で、仲間との信頼関係が崩れていくケースもあります。今回は、そんな仲間同士の起業の裏に潜むリスクを象徴するような、とある元経営者の転落劇をご紹介します。

第二の人生のはずが…仲間と始めた新事業

高橋昭一さん(仮名・52歳)は、父から受け継いだ製造業の会社を経営してきました。しかし、慢性的な人手不足や売上減少への不安から、思い切って事業を売却する決断をしました。

諸費用を差し引いたうえで手元に残ったのは約1億2000万円。そのうち6000万円を使って自宅マンションのローンを完済し、残った資金で「今度は自分のやりたいビジネスをやってみたい」と考えるようになります。

そんなとき、かねてから親しくしていた3人の経営者仲間たちと事業を始めることにしました。しょっちゅう飲み歩いている仲間でもあり、居酒屋、スナック、運転代行、美容業などを営む会社をつくろうと盛り上がり、新会社を設立することになったのです。

会社は高橋さんが2000万円、他の3人がそれぞれ500万円ずつを出資し、高橋さんが代表取締役となり設立しました。

当初は飲食業が好調で、系列店同士で送客し合うことで相乗効果も発揮。事業は軌道に乗っているように見えました。

順調だったスタートでしたが、開業から3年が経った頃、コロナ禍をきっかけに状況は大きく変わってしまったのでした。