<前編あらすじ>

親から受けついだ会社を売却し、約1億2000万円を手にした高橋昭一さん(仮名・52歳)。

その資金を元手に、気の合う仲間たちと居酒屋、スナック、運転代行、美容業などを営む会社を設立しました。当初は軌道に乗っていたものの、コロナ禍で状況は一変します。売上は激減。高橋さんはほかの経営メンバーに怒鳴り散らすようになりました。

そして事実上の経営者の吉田さん(仮名)には、一段と経営責任を問い詰めていました。

●前編:気の合う仲間との起業で「理想の第2の人生」を描いたはずが… 父の会社を売却し1億2000万円を得た52歳経営者に訪れた誤算

反感を持っていた友人からの提案

店は客足が戻り始めても以前のようには売上は戻らず、資金繰りに悩み、自己資金を投入し続けていました。「もう限界か……」と考えた高橋さんは廃業を判断したのでした。

「今ならマンションを売ればなんとかなるか……」

こう思って妻の愛美さん(仮名・48歳)に土下座し、家を手放さなければならないことを告げたのでした。

廃業の話を出したとき、吉田さんから「お店の備品や設備は自分が責任を持って買い取り、自分が店をやる」と提案され、わずかなお金でも欲しかった高橋さんは店ごと渡すことにします。

しかし、このことは吉田さんの目論見通りでした。

コロナ前の飲食店とスナックの利益率が高く、コロナ禍で高橋さんのモラハラとも思える叱責に反感を持っていた吉田さんはこの計画を思いつきました。

吉田さんに経営をほとんど丸投げしていた高橋さんは数字の中身をよく見ておらず、スリム化すれば見直せたはずのコストを削減しようと考えず、売上と目の前のお金のことしか考えていなかったのでした。