戻ってきた平和な時間

放課後のリビングは、にぎやかな声で満ちていた。海斗と近所の友だち2人が、テレビゲームに夢中になっている。画面の中でキャラクターが跳ねたり走ったりするたび、声を揃えて「うわっ」「やばいって!」と叫んでいる。

沙織は少し離れた場所で洗濯物を畳みながら、笑い声に耳を傾けていた。夕方の陽射しがカーテン越しにやわらかく部屋を照らし、穏やかな空気が流れている。ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。ドアを開けると、そこには紘くんが立っていた。

「こんにちは、あの……これ、持ってきた」

彼の手には、小さな紙袋。中には数種類のスナック菓子がぎっしり詰まっていた。「みんなで食べてって、お母さんが……」と少し照れたように言う。

「わあ、ありがとう。気を遣わせちゃってごめんね。うれしいわ」

沙織は受け取りながら微笑んだ。紘くんの表情には、前のような遠慮がなく、どこかすっきりしたような明るさがあった。

「海斗ー、紘くん来たよー!」
声をかけると、リビングから歓声が上がる。

「やった!紘ー! 今いいとこだから、早く来て!」
紘くんが靴を脱ぎながら笑い、リビングへ駆けていく。すぐにまた、ゲームの声と笑い声が部屋いっぱいに広がった。沙織は袋からお菓子を取り出し、お皿に並べていく。

「おやつ食べる人ー!」
声をかけると、一斉に「はーい!」と元気な返事が返ってきた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。