テレビ電話で定期的に連絡

瑛美は拓郎と相談して、父が作った借金をすべて返済することにした。貯金を切り崩さなければならない分は、瑛美がパートを始めて少しずつ補填していくことになった。

父は最後まで瑛美たちの援助を渋っていたが、拓郎が説得に加わってくれたこともあり、首を縦に振らせることができた。

一連の騒動が完全に片付くころには、夏の暑さも和らぎ、街並みが赤く色づく季節になっていた。

「あ、おじいちゃーん、ちゃんとご飯食べた?」

塾から帰ってきた遙香はリビングに設置してあるタブレットの画面に向けて笑って話しかけている。画面には嬉しそうに頬を緩ませた茂人の姿があった。

「おお、遥香。今日も元気そうだね」

瑛美は借金を返済しながら、それだけでは根本的な解決にならないと考えた。そこで思いついたのがテレビ電話だ。こうして定期的にテレビ電話をしておけば、健康状況などを確認できるし、何より1人で暮らす茂人にさみしい思いをさせないで済むと思ったのだ。

笑顔で話す遥香の横からタブレットをのぞき込んだ瑛美は、「こんなに甘い顔、娘の私にはしたことないのに」と内心突っ込みながら、孫との会話に頬をほころばせている茂人に目を細めた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。