借金をしてしまった悲しい理由
「ちゃんと説明をして。どうしてこうなったの? 力になれるのなら私は何でもやるから。家族でしょ? ちゃんと話してよ」
瑛美がそう言うと、茂人は観念したように口を開く。
「……パチンコだよ。パチンコにハマってな、それで金をどんどん使ってたら貯金がなくなっていつの間にか借金ができてたんだ」
「パチンコ……⁉ そんなのやったことなかったでしょ」
瑛美は頭を抱えた。瑛美の知る茂人はギャンブルのギの字だって無関係な父親だったはずだ。
茂人は僅かにうつむいた。
「暇つぶしにやったんだ。秀子がいなくなってから何かと退屈でな」
震える唇から弱々しく吐き出された茂人の言葉に、瑛美はハッとした。
退屈というのは茂人の精一杯の強がりなのだろう。きっと茂人は寂しかったのだ。最愛の妻を亡くし、1人娘との距離すら遠のき、たった1人でどう過ごして良いのかが分からなかったのだろう。そんな中で、インスタントな刺激があり、気楽に時間を消費することができるパチンコにハマったのだ。
瑛美は茂人を見つめた。
「ごめんね」
「どうしてお前が謝るんだ」
「いいの。ごめんね」
瑛美は父を抱きしめた。やせ細って見えた身体は抱きしめてみてもやはり小さく、細くなっていたから、瑛美は力を込めすぎないよう、だが父がこれ以上離れてしまわないよう、しっかりと抱きしめた。
やがて、耳元で父が鼻をすすり始めたが、瑛美はそのまま父の背中に腕を回し続けていた。